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青年期精神病に対する心理的介入

心理的介入とは?

心理的介入とは、感情や思考、行動を変化させるために行う、薬を使わない介入法の総称です。グループまたは個人で連続したセッションを行う形式が一般的です。認知行動療法や心理教育、社会生活技能訓練など、多くの方法が存在します。当事者や家族は心理的介入を希望することが多いため、患者中心のケアという観点から心理的介入が推奨されています。精神病は多くが青年期(13~17歳)に発症するため、予後を改善するために、青年期に効果的な介入を行うことが重要視されています。

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 青年期の精神病に対する心理学的介入

基礎情報

対象者 精神病を持つ青年期の人
組み入れ研究数 7件
研究参加人数 合計319人
最終検索日 2019年3月8日
効果の調べ方
  1. 認知機能リハビリテーションを行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較
  2. 集団療法を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較
  3. 認知機能リハビリテーションと心理教育を併せて行った場合と、心理教育のみ行った場合を比較
  4. 集団心理教育を当事者と家族の両方に行った場合と、非構造的な集団療法を行った場合を比較

青年期精神病に対する心理的介入は何に効果があるか?

表の見方はこちら

アウトカム/関心ごと 効果
1. 認知機能リハビリテーション VS. 通常の支援
認知機能 改善
精神症状 改善度小
全体的な状態 同程度
全般的機能 同程度
研究からの離脱 同程度
2. 集団療法 VS. 通常の支援
全体的な状態 改善
精神症状 同程度
研究からの離脱 同程度
3. 認知機能リハビリテーション+心理教育 VS. 心理教育
全体的な状態 同程度
精神症状 同程度
認知機能 同程度
4. 集団心理教育(当事者・家族並行) VS. 非構造的な集団療法(当事者・家族並行)
全体的な状態 同程度
精神症状 同程度
入院率 同程度
研究からの離脱 同程度

この表は、認知機能リハビリテーション・集団療法・心理教育に関して、さまざまな条件で比較したとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

認知機能リハビリテーションを行うと、認知機能(短期記憶)が改善する可能性が示されました。しかし精神症状については、認知機能リハビリテーションを行わない方が改善度が大きいかもしれません。集団療法は、通常の支援と比べて全体的な状態を改善することが示されました。そのほかの比較では、心理的介入はほとんど効果がないことが示されました。

認知機能リハビリテーションとは、記憶力や集中力、問題解決能力などの脳機能の改善や、自分の行動パターンの理解を目的とした介入法です。患者はドリルや簡単なコンピュータゲームなどの様々な課題に取り組みます。

集団療法とは、特定の介入法ではなく、集団で行う様々な心理的介入を指しています。組み入れられた研究でも、心理教育をベースにいくつかの心理的介入を組み合わせたプログラムが行われました。集団で行うことで、参加者同士の問題の共有やコミュニケーションが可能になり、個人セッションでは得られない効果があると期待されています。

心理教育とは、疾患についての情報を、患者や家族に適切に理解してもらうことを目的とした介入法です。病気の原因や治療法などについて説明し、患者や家族の疑問を解消します。※心理教育のページはこちら  家族心理教育のページはこちら

全体的な状態とは、全体的な状態とは、症状の重さや支援による回復度合いなどを総合的に判断した指標です。全般的機能とは、社会で生活していくための能力が総合的に見てどの程度備わっているかの指標です。研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。

留意点

結果は参加者数の少ない非常に少数の研究のデータに基づいており、これらの研究の質にも懸念があります。そのため、将来行われる研究によって結果が変わる可能性があり、さらなる大規模で質の良い試験が必要とされています。

[引用]
Datta SS, Daruvala R, Kumar A. Psychological interventions for psychosis in adolescents. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 7. Art. No.: CD009533. DOI: 10.1002/14651858.CD009533.pub2.
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