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口腔衛生教育

口腔衛生教育

口腔衛生教育とは、口腔内の衛生状態を良好に保つためのアドバイスや、スキルを身につけるためのトレーニングを指します。また、治療や予防に役立てるために、医療者が口腔衛生の状態をチェックすること(モニタリング)を含めて、口腔衛生教育と呼ぶことがあります。 統合失調症のような重度精神疾患を持つ人は、疾患を持たない一般の人に比べて歯周病などの口腔疾患にかかる割合が高く、口腔治療の必要性が高くなる傾向にあるといわれています。口腔衛生状態の悪化によって、冠動脈疾患、糖尿病、呼吸器疾患にかかりやすくなることが指摘されています。さらに、食事や快適さ、外見、自尊心など、日常生活のあらゆる側面に影響を及ぼすことが分かってきました。そのため、これまでに優先事項とみなされてこなかった口腔衛生を重要視すべきという指摘が強くなってきています。

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 重度精神疾患を持つ人に対する口腔衛生教育(アドバイスとトレーニング)

基礎情報

対象者 重度精神疾患を持つ人
組み入れ研究数 3件
研究参加人数 合計1358人
最終検索日 2015年11月5日
効果の調べ方 1.口腔衛生教育を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較
2.口腔衛生教育に動機づけ面接を加えた支援を行った場合と、口腔衛生教育のみを行った場合を比較
3.口腔衛生の状態を記録すること(モニタリング)を行った場合と、行わなかった場合を比較

口腔衛生教育は何に効果があるか?

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アウトカム/関心ごと 効果
1.口腔衛生教育 VS. 通常の支援
歯の状態 良好
研究からの離脱 同程度
2.動機づけ面接+口腔衛生教育 VS. 口腔衛生教育のみ
歯の状態 良好
研究からの離脱 同程度
3.モニタリングあり VS. モニタリングなし
研究からの離脱 減少

この表は、1.口腔衛生教育を通常の支援と比べたとき、2.動機づけ面接を追加した口腔衛生教育を口腔衛生教育のみの支援と比べたとき、3.モニタリングを行った場合を行わなかった場合と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

1.では、口腔衛生教育を行うと、歯の状態を良好に保つ効果がありました。また、2.では、口腔衛生教育に動機づけ面接を追加すると、さらに効果的であることが示されました。研究からの離脱については、1.および2.では支援の間に違いはありませんでしたが、3.では研究からの離脱を減少させる効果があることが示されました。

歯の状態は、歯垢の付着量に関する指標を用いて評価されています。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。
動機づけ面接とは、対象者自らが変化することへのモチベーションを高めることを目指す体系化されたカウンセリング技法です。
モニタリングとは、医療者が歯の状態を定期的にチェックし、アドバイスすることを指します。

留意点

組み入れられた研究は少なく、歯科医に行くことや1日2回の歯磨きをすることなど、口腔衛生に関わる主要なアウトカムについて調べた研究はありませんでした。したがって、明確なエビデンスを蓄積するために、より質の高い研究の実施が求められています。

[引用]
Khokhar MA, Khokhar WA, Clifton AV, Tosh GE. Oral health education (advice and training) for people with serious mental illness. Cochrane Database of Systematic Reviews 2016, Issue 9. Art. No.: CD008802. DOI: 10.1002/14651858.CD008802.pub3.
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