#症状の軽減 #生活の向上 #治療の継続
認知行動療法
Cognitive behavioral therapy:CBT
認知行動療法とは
認知行動療法とは、不適応な行動や自分を苦しくするような考え方のくせを、その人が楽に過ごせるように変容することを目指した心理療法です。支援を受ける人と支援者が協働してその人の問題に向き合い、自己理解に基づく問題解決を目指します。最終的には支援者がいなくても、考え方や行動を自分でコントロールできるようになることが目標です。うつ病や不安障害に効果があることが知られており、統合失調症の幻聴や妄想にも一定の効果があるとされています。国内では2010年4月に診療報酬化されており、インターネットを利用した取り組みが始まるなど,多くの人がより気軽に利用できるような環境づくりも始まっています。
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世界の研究について知る
(コクランレビュー) 統合失調症患者に対する認知行動療法
+標準的ケア
VS. 標準的ケア
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世界の研究について知る
(コクランレビュー) 統合失調症患者に対する認知行動療法
+標準的ケア
VS. 標準的ケア+他の心理社会的治療 -
世界の研究について知る
(コクランレビュー) 統合失調症に対する短期認知行動療法
VS. 標準の認知行動療法
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世界の研究について知る
(コクランレビュー) 成人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対する認知行動的介入
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世界の研究について知る
(コクランレビュー) 自閉症スペクトラム障害(ASD)患者に併存した強迫性障害(OCD)に対する行動療法および認知行動療法
世界の研究について知る(コクランレビュー) 統合失調症患者に対する認知行動療法+標準的ケア VS. 標準的ケア
基礎情報
対象者 | 統合失調症もしくは統合失調症に関連する疾患を持つ人 |
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組み入れ研究数 | 60件 |
研究参加人数 | 合計5992人 |
最終検索日 | 2017年3月6日 |
効果の調べ方 | 標準的ケアに認知行動療法を付加した支援と標準的ケアのみ(通常の支援)を比較 |
統合失調症に対する認知行動療法は標準的ケアと比べて何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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統合失調症に対する認知行動療法+標準的ケア VS. 標準的ケアのみ | |
有害事象 | 減少 |
全体的な状態 | 改善 |
再発 | 同程度 |
精神状態 | 同程度 |
社会的機能 | 同程度 |
生活の質 | 同程度 |
治療の満足度 | 同程度 |
この表は、統合失調症や関連疾患を持つ人を対象として、標準的ケアに認知行動療法を付加した支援を行った場合と標準的ケアのみ(通常の支援)を行った場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
統合失調症に対する認知行動療法は、全体的な状態と有害事象の減少に効果がありました。しかし、再発、精神状態、社会的機能、生活の質、治療の満足度については、通常の支援との間に違いはありませんでした。
全体的な状態とは、症状の重さや支援による回復度合いなどを総合的に判断した指標です。
留意点
統合失調症に対する認知行動療法に関して多くの研究が行われてきましたが、現状では利用できる科学的根拠の質が低く、効果について強く主張できません。より質の高いデータが利用可能になるまで、効果に関する結論は出せないということに注意が必要です。
- [引用]
- Jones C, Hacker D, Xia J, Meaden A, Irving CB, Zhao S, Chen J, Shi C. Cognitive behavioural therapy plus standard careversus standard care for people with schizophrenia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 12. Art. No.: CD007964. DOI:10.1002/14651858.CD007964.pub2.
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世界の研究について知る(コクランレビュー)
統合失調症患者に対する認知行動療法+標準的ケア
VS. 標準的ケア+他の心理社会的治療
基礎情報
対象者 | 統合失調症を持つ人 |
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組み入れ研究数 | 36件 |
研究参加人数 | 合計3542人 |
最終検索日 | 2017年3月6日 |
効果の調べ方 | 認知行動療法と、その他の心理社会的支援を比較 |
認知行動療法はその他の心理社会的支援と比べて何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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認知行動療法 VS. その他の心理社会的支援 | |
研究からの離脱 | 少ない |
再入院 | 同程度 |
精神状態 | 同程度 |
死亡率 | 同程度 |
社会的機能 | 同程度 |
生活の質 | 同程度 |
この表は、統合失調症に対する認知行動療法をその他の心理社会的支援と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
統合失調症に対する認知行動療法は、研究からの離脱がその他の心理社会的支援と比べて少ないことが示されました。再入院、精神状態、死亡率、社会的機能、生活の質については、統合失調症に対する認知行動療法とその他の心理社会的支援の間に違いはありませんでした。
このレビューにおけるその他の心理社会的支援には、心理教育や家族療法などが含まれていました。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。
留意点
統合失調症に対する認知行動療法はその他の心理社会的支援と比べて、明らかで納得できるような有利な点はないことが示されました。統合失調症に対する認知行動療法に関して多くの研究が行われてきましたが、現状では利用できる科学的根拠の質が低く、効果について強く主張できません。より質の高いデータが利用可能になるまで、効果に関する結論は出せないということに注意が必要です。
- [引用]
- Jones C, Hacker D, Meaden A, Cormac I, Irving CB, Xia J, Zhao S, Shi C, Chen J. Cognitive behavioural therapy plus standard care versus standard care plus other psychosocial treatments for people with schizophrenia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 11. Art. No.: CD008712. DOI: 10.1002/14651858.CD008712.pub3.
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世界の研究について知る(コクランレビュー)
統合失調症に対する短期認知行動療法
VS. 標準の認知行動療法
基礎情報
対象者 | 統合失調症を持つ人 |
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組み入れ研究数 | 0件 |
最終検索日 | 2015年8月26日 |
統合失調症に対する短期認知行動療法の効果を調べた研究が探されましたが、見つかりませんでした。
留意点
統合失調症に対する短期認知行動療法の普及は支援の受けやすさを改善するための方法の1つです。今後、標準的な認知行動療法と短期認知行動療法を明確に定義した上で、短期認知行動療法にかかる費用やその効果を明らかにするための大規模な研究の実施が望まれます。
- [引用]
- Naeem F, Farooq S, Kingdon D. Cognitive behavioural therapy (brief versus standard duration) for schizophrenia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2015, Issue 10. Art. No.: CD010646.DOI: 10.1002/14651858.CD010646.pub3.
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 成人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対する認知行動的介入
基礎情報
対象者 | 注意欠陥・多動性障害(ADHD)を持つ成人 |
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組み入れ研究数 | 14件 |
研究参加人数 | 合計700人 |
最終検索日 | 2017年6月 |
効果の調べ方 | 1.認知行動療法を行った場合と、支持的心理療法を行った場合を比較 2.認知行動療法を行った場合と、通常の支援または未治療の場合を比較 3.認知行動療法に薬物療法を加えた支援を行った場合と、薬物療法のみを行った場合を比較 4.認知行動療法を行った場合と、特定の支援の場合を比較 |
認知行動療法は何に効果があるか
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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認知行動療法 VS. 支持的心理療法 | |
ADHD症状(支援者評価) | 改善 |
ADHD症状(自己評価) | 同程度 |
抑うつ症状(自己評価) | 同程度 |
不安(支援者評価) | 同程度 |
認知行動療法 VS. 通常の支援または未治療 | |
ADHD症状(支援者評価) | 改善 |
ADHD症状(自己評価) | 改善 |
抑うつ症状(自己評価) | 改善 |
不安(自己評価) | 改善 |
生活の質(自己評価) | 同程度 |
認知行動療法+薬物療法 VS. 薬物療法のみ | |
ADHD症状(支援者評価) | 改善 |
ADHD症状(自己評価) | 改善 |
抑うつ症状(支援者評価) | 改善 |
抑うつ症状(自己評価) | 改善 |
不安(支援者評価) | 改善 |
不安(自己評価) | 改善 |
認知行動療法 VS. 特定の支援 | |
ADHD症状(支援者評価) | 改善 |
ADHD症状(自己評価) | 改善 |
抑うつ症状(自己評価) | 同程度 |
不安(自己評価) | 同程度 |
生活の質(自己評価) | 不明 |
この表は、1.認知行動療法を支持的心理療法と比べたとき、2.認知行動療法を通常の支援または未治療と比べたとき、3.認知行動療法に薬物療法を加えた支援を薬物療法のみと比べたとき、4.認知行動療法を特定の支援と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
1.では、認知行動療法を行うと、支持的心理療法と比べて、支援者評価によるADHD症状が改善しました。
2.では、通常の支援または未治療に比べて、支援者評価によるADHD症状だけでなく、自己評価によるADHD症状および抑うつ症状、不安に改善が認められました。
3.では、支援者評価および自己評価によるADHD症状、抑うつ、不安が改善しました。
4.では、特定の支援と比べて、支援者評価および自己評価によるADHD症状が改善しましたが、自己評価による生活の質に対する効果は一貫しませんでした。
ADHD症状とは、不注意やせっかちで、落ち着きがないことによって、仕事や学業、周りに合わせることに支障をきたす状態を指します。
このレビューでは、本人からみてどの程度の症状があるかについて評価する「自己評価」と、支援者からみて評価する「支援者評価」の結果が報告されています。
特定の支援には、心理教育、構造的な集団療法、スキルプリント(症状の対処スキルに関する資料)の提供などが含まれていました。
留意点
注意欠陥・多動性障害に対する認知行動療法はその他の心理社会的支援と比べて、有益である可能性があります。しかし、現状では利用できる科学的根拠の質が低く、効果を測定するための指標に一貫性がないため、有効性について強く主張できません。また、組み入れられた研究は、欧米やオーストラリアで行われたもので、実施された地域が限られていました。より質の高いデータが利用可能になるまで、効果に関する結論は出せないということに注意が必要です。
- [引用]
- Lopez PL, Torrente FM, Ciapponi A, Lischinsky AG, Cetkovich‐Bakmas M, Rojas JI, Romano M, Manes FF. Cognitive‐behavioural interventions for attention deficit hyperactivity disorder (ADHD) in adults. Cochrane Database of Systematic Reviews 2018, Issue 3. Art. No.: CD010840. DOI: 10.1002/14651858.CD010840.pub2.
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 自閉症スペクトラム障害(ASD)患者に併存した強迫性障害(OCD)に対する行動療法および認知行動療法
基礎情報
対象者 | 自閉症スペクトラム障害(ASD)に併存した強迫性障害を持つ青年・成人(14〜65歳) |
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組み入れ研究数 | 1件 |
研究参加人数 | 46人 |
最終検索日 | 2020年8月24日 |
効果の調べ方 | 認知行動療法と、その他の心理的介入(不安管理法)を比較 |
認知行動療法は不安管理法と比べて何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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認知行動療法 VS. 不安管理法 | |
研究からの離脱 | 同程度 |
強迫症状 | 同程度 |
生活の質 | 同程度 |
うつ症状 | 同程度 |
不安症状 | 同程度 |
この表は、ASDに併存した強迫性障害に対する認知行動療法を不安管理法と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
認知行動療法と不安管理法との間に違いはありませんでした。
レビューでは、比較対象として、その他の心理的介入を想定していましたが、不安管理法を実施した1研究のみ組み入れられました。
不安管理法は、不安や気分、健康的な習慣に関する心理教育、一般的な不安管理技法(腹式呼吸や漸進的筋弛緩法)などで構成されており、組み入れられた研究のために作成されました。
強迫症状とは、ある考えが浮かんで離れなかったり、不安を振り払おうと同じ行動を繰り返したりすることで、日常生活に支障をきたす状態を指します。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。
留意点
本レビューに組み入れられた研究は1件のみであり、ASDに併存した強迫性障害に対する認知行動療法が有効であるかについて結論を出すことは困難です。ASD患者における強迫性障害の現れ方や影響を踏まえた研究の実施が望まれます。
- [引用]
- Elliott SJ, Marshall D, Morley K, Uphoff E, Kumar M, Meader N. Behavioural and cognitive behavioural therapy for obsessive compulsive disorder (OCD) in individuals with autism spectrum disorder (ASD). Cochrane Database of Systematic Reviews 2021, Issue 9. Art. No.: CD013173. DOI: 10.1002/14651858.CD013173.pub2.
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