#再発・入院の予防 #生活の向上 #治療の継続

早期介入

早期介入とは?

早期介入は、「早期発見」と「症状の進行に応じた治療」の2つに重点が置かれています。早期発見は、精神病(≒統合失調症)発症の可能性が高い人にできるだけ早い時期に支援を届けることを指します。また、症状の進行に応じた治療とは、発症後の初期段階の人に対して、専門的な治療を行うことを目的とした支援のことです。特に、後者には認知行動療法や家族療法、心理教育、就労支援など多彩な専門的支援が含まれています。それらは、通常の治療を補う形で提供されたり、早期介入のための専門のチームによって行われたりします。このような支援を行うことによって、精神病発症の予防や発症後の重症化の防止を目指します。

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 精神病に対する早期介入

基礎情報

対象者 精神病発症の前兆となる症状を示す人、または精神病発症後の初期の症状を示す人
組み入れ研究数 18件
研究参加人数 合計1808人
最終検索日 2009年3月
効果の調べ方 精神病発症後の初期の症状を示す人を対象に、早期介入(専門チームによる支援)を行った場合と行わなかった場合(通常の支援)
※このレビューで組み入れられた18件の研究のうち、最大規模の研究のみの結果をまとめました。

早期介入(専門チームによる支援)は何に効果があるか?

表の見方はこちら

アウトカム/関心ごと 効果
早期介入(専門チームによる支援) VS. 通常の支援
研究からの離脱 減少
治療コンプライアンス 改善
生活が自立していない人 減少
働いていない、または教育を受けていない人 同程度
入院していない人 同程度
平均入院日数 同程度

この表は、精神病発症後の初期の症状を示す人に対して行った専門チームによる支援を通常の支援と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

精神病発症後の初期の症状を示す人が専門チームによる支援を利用すると、研究からの離脱が減り、治療コンプライアンスが改善し、生活が自立していない人の割合が通常の支援と比べて減少しました。一方、働いていない、または教育を受けていない人の割合は、通常の支援と同程度で、入院していない人の割合や、入院した人の平均入院日数にも違いはみられませんでした。

専門チームによる支援は、精神病発症後の初期の症状を示す人のための多職種による支援を指します。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。
治療コンプライアンスとは、当事者が予定に従って治療を受けているかどうかの指標です。

留意点

上記の結果は、このレビューで組み入れられた18件の研究のうち、最大規模の研究(Petersen et al., 2005)のみの結果をまとめました。
組み入れられた研究は主に北アメリカとヨーロッパ、オーストラリアで行われました。研究で行われた早期介入の支援方法は多様であるために一貫性がなく、大半が小規模なものであることから、方法論的な限界が認められました。したがって、早期介入を利用する人にとって有効性や持続的な利益があるかどうかについては疑問が残るため、さらなる研究が望まれます。

[引用]
Marshall M, Rathbone J. Early intervention for psychosis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2011, Issue 6. Art. No.: CD004718. DOI: 10.1002/14651858.CD004718.pub3.
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 最近発症した精神病に対する専門の早期介入チーム

基礎情報

対象者 精神病発症後の初期の症状を示す人
(精神病発症の前兆となる症状を示す人は除外)
組み入れ研究数 4件
研究参加人数 合計1145人
最終検索日 2019年10月22日
効果の調べ方 早期介入(専門チームによる支援)を行った場合と行わなかった場合(通常の支援)を比較

早期介入(専門チームによる支援)は何に効果があるか?

表の見方はこちら

アウトカム/関心ごと 効果
早期介入(専門チームによる支援) VS. 通常の支援
全体的な状態 改善
サービスからの離脱 減少
精神科入院率 減少
精神科入院日数 減少
全般的機能 改善
精神症状 同程度
死亡率 同程度

この表は、早期介入(専門チームによる支援)を通常の支援と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

専門チームによる早期介入を利用すると、通常の支援と比べて、全体的な状態が改善し、サービスからの離脱および精神科入院率、精神科入院日数が減り,全般的機能が改善しました。一方、精神症状の改善や死亡率は、通常の支援と同程度で違いはみられませんでした。

全体的な状態とは、症状の重さや支援による回復度合いなどを総合的に判断した指標です。
サービスからの離脱とは、予定されたサービス利用期間が終わる前に、参加者がそのサービスへの参加を取りやめることです。
全般的機能とは、社会で生活していくための能力が総合的に見てどの程度備わっているかの指標です。

留意点

組み入れられた研究はデンマーク、スウェーデン、英国、米国などの高所得国のみで実施されました。したがって、その他の国々で早期介入を利用する人にとって、早期介入による有効性や持続的な利益があるかどうかについては疑問が残るため、さらなる研究が望まれます。

[引用]
Puntis S, Minichino A, De Crescenzo F, Harrison R, Cipriani A, Lennox B. Specialised early intervention teams for recent-onset psychosis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 11. Art. No.: CD013288. DOI: 10.1002/14651858.CD013288.pub2.
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 最近発症した精神病に対する専門の早期介入チーム(期間延長)

基礎情報

対象者 精神病発症後の初期の症状を示す人
(精神病発症の前兆となる症状を示す人は除外)
組み入れ研究数 3件
研究参加人数 合計780人
最終検索日 2019年10月22日
効果の調べ方 早期介入(専門チームによる支援)の期間を延長した場合と、延長せずに通常の支援に移行した場合を比較する

早期介入(専門チームによる支援)の期間の延長は何に効果があるか?

表の見方はこちら

アウトカム/関心ごと 効果
早期介入(標準的な期間+延長期間)VS. 早期介入(標準的な期間のみ)+通常の支援
サービスからの離脱 減少
全体的な状態 同程度
精神科入院率 同程度
精神科入院日数 同程度
精神症状 同程度
死亡率 同程度
社会的機能 同程度

この表は、早期介入(専門チームによる支援)の期間を延長した場合と、延長せずに通常の支援に移行した場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

早期介入の支援期間を延長すると、延長せずに通常の支援に移行した場合と比べて、サービスからの離脱が減少しました。一方、全体的な状態や精神科入院率、精神科入院日数、精神症状、死亡率、社会的機能は、期間を延長せずに通常の支援に移行した場合と同程度で違いはみられませんでした。

専門チームによる早期介入は、通常2~3年間行われ、その後は地域精神保健サービスに移行します。早期介入が終了すると、良好な状態が持続しない可能性があることを示す研究結果があったため、早期介入を5年まで延長した場合の効果について調査されました。
サービスからの離脱とは、予定されたサービス利用期間が終わる前に、参加者がそのサービスへの参加を取りやめることです。
全体的な状態とは、症状の重さや支援による回復度合いなどを総合的に判断した指標です。

留意点

組み入れられた研究はデンマーク、カナダ、香港で実施された3件のみでした。したがって、より長い早期介入が、通常の2~3年よりも全体的に優れているかどうかを確かめるには、より多くのエビデンスが必要です。

[引用]
Puntis S, Minichino A, De Crescenzo F, Harrison R, Cipriani A, Lennox B. Specialised early intervention teams (extended time) for recent‐onset psychosis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 11. Art. No.: CD013287. DOI: 10.1002/14651858.CD013287.pub2.
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