お金を用いた行動変容の促し

お金を用いた行動変容の促し

お金を用いた行動変容とは、適切な行動を促したり、課題に取り組む動機(モチベーション)を高めたりするために、お金などの報酬を渡す方法です。 お金を報酬として用いることは、精神疾患を持つ人々の行動変容のために古くから取り入れられてきましたが、有効性については様々な議論があります。そのため、行動変容のためにお金を用いる場合には、お金を受け取る人の心情に配慮するなど様々な点に注意する必要があります。

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 統合失調症をもつ人に対する金銭的インセンティブ(誘因)

基礎情報

対象者 統合失調症を持つ入院患者
組み入れ研究数 1件
研究参加人数 合計25人
最終検索日 2008年6月
効果の調べ方 プラスチック製の人形を組み立てる作業に対し、金銭的な報酬を用いた場合と、用いなかった場合を比較

金銭的な報酬は何に効果があるか?

表の見方はこちら

アウトカム/関心ごと 効果
金銭的な報酬あり VS. 金銭的な報酬なし
人形の組み立て数 同程度
研究からの離脱 同程度

この表は、プラスチック製の人形を組み立てる作業に対し、金銭的な報酬を用いた場合と用いなかった場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

人形の組み立て数や研究からの離脱について、金銭的な報酬を用いた場合と用いなかった場合の間に違いはありませんでした。

この研究で用いられた作業内容は、人形の体のソケットに2本の腕と2本の脚を挿入することでした。報酬の金額は、人形12体の組み立てに対して3ペンス(現在の貨幣価値で120~150円程度)でした。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。

留意点

このレビューに組み入れられた研究は1件のみで、非常に小規模かつ1960年代初頭に平均20年間入院していた人を対象に行われたものでした。そのため、現状に即した研究の実施が望まれます。

[引用]
Michalczuk R, Mitchell A. Monetary incentives for schizophrenia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2009, Issue 4. Art. No.: CD007626. DOI: 10.1002/14651858.CD007626.pub2.
詳しくはこちら