自分に関する情報の保有
自分に関する情報の保有とは?
自分に関する情報の保有とは、自分の疾患の特徴や、受けてきた支援、いざという時に希望する支援などの情報を、当事者が常に持っていることです。小児医療における母子手帳のように、支援を行う上で助けになる情報を当事者が保有しておくことで、複数の医療機関にかかったときに役立つとされています。また、当事者が自らの治療に関わっているという気持ちを高め、病気をコントロールする感覚を得ることが期待されます。保有する情報には、医療機関の連絡先、予約の日時、使っている薬、専門家によるメモ、再発が起きる前の特徴、クライシス(病状の危機的な悪化)時に希望する治療や使わないでほしい薬、などがあります。事前指示(精神科事前指示のページを参照)は、当事者による情報の保有に含まれます。
世界の研究について知る(コクランレビュー) 重度の精神疾患をもつ人々の日常的ケアのための患者が保有する個人情報
基礎情報
対象者 | 重度精神疾患の診断を持つ成人 |
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組み入れ研究数 | 4件 |
研究参加人数 | 合計607人 |
最終検索日 | 2011年8月 |
効果の調べ方 | 当事者が個別の臨床的な情報を保有した場合と、しなかった場合(通常の支援で得られる情報のみ)を比較 |
個別の臨床的な情報の保有は何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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個別の臨床的な情報の保有 VS. 通常の支援 | |
入院 | 同程度 |
強制入院 | 同程度 |
精神症状 | 不明 |
患者満足度 | 不明 |
死亡率 | 不明 |
暴力 | 不明 |
この表は、当事者が個別の臨床的な情報を保有した場合と、しなかった場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
入院や強制入院が起こる割合について、特に効果は認められませんでした。 精神症状、患者満足度、死亡率、暴力の起きる割合については、データが不足しており、効果を検証できませんでした。
留意点
個別の臨床的な情報の保有は、低コストで、当事者にも受け入れられやすい方法です。しかし今のところ、それが人々にとって有益であり、費用対効果が高いとは言うことができません。今後、より大規模な研究でさらなる検証を行うとともに、どのような要素が結果に影響しているのか(情報の中身によって結果が異なるか、など)も調べることが望まれます。
- [引用]
- Farrelly S, Brown GE, Flach C, Barley E, Laugharne R, Henderson C. User-held personalised information for routine care of people with severe mental illness. Cochrane Database of Systematic Reviews 2013, Issue 10. Art. No.: CD001711. DOI: 10.1002/14651858.CD001711.pub2.
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