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治療ガイドラインの導入

治療ガイドラインの導入とは?

治療ガイドラインとは、エビデンス(科学的根拠)に基づいた治療を促進するために、主に専門家向けに作られた文書や表、フローチャートなどを指します。治療ガイドラインは、研究で得られた知見を現場の実践に活かすために有用だと考えられています。しかし、治療ガイドラインを作成し公開するだけでは、日々の診療や支援に携わっている専門家の判断や行動を変化させるのに十分ではないとも考えられます。そこで、計画的に治療ガイドラインを現場に取り入れ、実践で活用する試みが行われています。例えば、専門家に対して治療ガイドラインの内容を講義する、特定の診療場面での行動が具体的に指示されたマニュアルを配布する、などがあります。治療ガイドラインの活用が、より良い治療・支援につながり、結果として治療・支援を受ける人に良い影響を与えることが期待されています。

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 専門的な精神保健ケアのための治療ガイドラインの実施

基礎情報

対象者 統合失調症もしくは関連する重度精神疾患を持つ人
組み入れ研究数 6件
研究参加人数 合計1727人
最終検索日 2015年8月
効果の調べ方 治療ガイドラインの導入を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較

治療ガイドラインの導入は何に効果があるか?

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アウトカム/関心ごと 効果
治療ガイドラインの導入 VS. 通常の支援
心血管疾患の検査を受けた患者数 増加
抗精神病薬の多剤処方をされた患者数 同程度
トレーニングを受けたスタッフ数 同程度
スーパーバイズを受けたスタッフ数 同程度
心理的な介入を行うスタッフ数 同程度
全体的な状態 同程度
患者満足度 同程度
治療アドヒアランス 同程度
服薬アドヒアランス 同程度
服薬への態度 同程度
精神症状 同程度
生活の質 報告なし

この表は、治療ガイドラインの導入を行った場合と行わなかった場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

組み入れられた6件の研究では、それぞれ異なる目的と方法で治療ガイドラインの導入を行っていました。心血管疾患の検査の促進が目的の研究では、コミュニティメンタルヘルスチームの看護師に対して介入を行い、ねらい通り、心血管疾患の検査を受けた患者数が増加しました。 それ以外では、多剤処方の予防、服薬アドヒアランスの促進などを目標に介入が行われました。しかし、いずれの研究でも、専門家の行動に関するアウトカム、患者に関するアウトカムのどちらにも改善は認められませんでした。

全体的な状態とは、症状の重さや支援による回復度合いなどを総合的に判断した指標です。 治療アドヒアランス・服薬アドヒアランスとは、医師の勧めに従って当事者が治療を受けているか、あるいは服薬しているかについての指標です。

留意点

研究数が少なく、エビデンスの質は低かったため、決定的な結論を出すことはできません。治療ガイドラインの導入が、提供されるサービスと患者にどのような影響を与えるかを知るためには、より大規模な研究が必要とされています。

[引用]
Bighelli I, Ostuzzi G, Girlanda F, Cipriani A, Becker T, Koesters M, Barbui C. Implementation of treatment guidelines for specialist mental health care. Cochrane Database of Systematic Reviews 2016, Issue 12. Art. No.: CD009780.
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