#再発・入院の予防 #治療の継続 #家族の負担軽減
家族心理教育
家族心理教育とは?
家族心理教育とは、当事者の家族に精神障害についての正しい知識や心理的なサポートを提供し、家族の当事者に対する否定的な感情や心理的な負担を軽減する支援です。当事者の再入院防止などについて効果が期待されており、科学的根拠に基づく実践の1つです。
家族心理教育は科学的根拠の蓄積があるにもかかわらず、現実にはあまり実施されていないことが国内では課題となっていました。近年では、グループでの家族心理教育や家族同士の経験の共有などについても効果の検討が始まっており、現実の支援場面に合わせた柔軟な家族心理教育の実施が求められています。
世界の研究について知る(コクランレビュー) 統合失調症に対する家族介入
基礎情報
対象者 | 統合失調症または統合失調症に似た状態を持つ人々の家族 |
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組み入れ研究数 | 53件 |
研究参加人数 | 5767人 |
最終検索日 | 2008年9月 |
効果の調べ方 | 家族心理教育(6週間から3年の範囲)を地域で行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 |
家族心理教育は何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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家族心理教育 VS. 通常の支援 | |
入院 | 減少 |
再発 | 減少 |
服薬コンプライアンス不良 | 改善 |
未就労(失業状態) | 同程度 |
自立生活の困難さ | 同程度 |
自殺 | 結論出ず |
この表は、家族心理教育を地域で行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
このレビューで取り上げられた家族心理教育の期間は短くて6週間、長くて3年でした。家族心理教育は、入院や再発を減らし、服薬コンプライアンスを促進する可能性があります。しかし、就労や自立生活の困難さについては、家族心理教育と通常の支援の間に差はありませんでした。また、当事者の自殺を予防、あるいは助長することを示唆するデータは見つかりませんでした。
服薬コンプライアンスとは、当事者が医師の処方通りに服薬しているかどうかの指標です。
留意点
このレビューで取り上げられている研究の治療効果は、方法論的な質の低さのために、過大評価されている可能性があります。今後、質の高い研究を行うためのガイドラインである「CONSORTガイドライン」に沿った研究が実施されることが望まれます。
- [引用]
- Pharoah F, Mari JJ, Rathbone J, Wong W. Family intervention for schizophrenia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010, Issue 12. Art. No.: CD000088. DOI: 10.1002/14651858.CD000088.pub3.
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 統合失調症に対する家族介入(短期)
基礎情報
対象者 | 統合失調症または統合失調症に似た状態を持つ人々の家族 |
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組み入れ研究数 | 4件 |
研究参加人数 | 合計163人 |
最終検索日 | 2012年7月 |
効果の調べ方 | 短期の家族心理教育(5セッションから3か月間の範囲)を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 |
家族心理教育(短期)は何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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家族心理教育(短期) VS. 通常の支援 | |
家族の理解度 | 改善 |
入院率 | 同程度 |
再発 | 同程度 |
入院日数 | 報告なし |
有害事象 | 報告なし |
服薬コンプライアンス | 報告なし |
当事者の生活の質 | 報告なし |
介護者の生活の質 | 報告なし |
ケアへの満足度 | 報告なし |
経済的指標 | 報告なし |
この表は、短期の家族心理教育(5セッションから3ヶ月間の範囲)を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
短期の家族心理教育では、家族の病気に対する知識が増加し、理解度が改善しました。
しかし、当事者の再入院や再発については、短期の家族心理教育を受けた家族と受けていない家族の間に違いはありませんでした。
入院日数の減少など関心の高いアウトカムについて報告されておらず、効果がわからないものが多くありました。
服薬コンプライアンスとは、当事者が医師の処方通りに服薬しているかどうかの指標です。
留意点
このレビューで取り上げられた研究は規模が小さく、報告されている内容に不足がありました。現在の国際的な基準に合わせて考えると、このレビューのみで家族心理教育の効果について断言することはできません。しかし、短期の家族心理教育は家族側のニーズに適っており、限られた精神保健のスタッフや予算内で実施できる点で重要と考えられます。
- [引用]
- Okpokoro U, Adams CE, Sampson S. Family intervention (brief) for schizophrenia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 3. Art. No.: CD009802. DOI: 10.1002/14651858.CD009802.pub2.
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 重度精神疾患を持つ人の兄弟姉妹のための心理教育
基礎情報
対象者 | 統合失調症を持つ人の兄弟姉妹 |
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組み入れ研究数 | 1件 |
研究参加人数 | 合計9人 |
最終検索日 | 2013年11月12日 |
効果の調べ方 | 兄弟姉妹に対する心理教育および通常の支援を行った場合と、通常の支援のみを比較 |
兄弟姉妹に対する心理教育は何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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兄弟姉妹に対する心理教育+通常の支援 VS. 通常の支援 | |
兄弟姉妹の負担への対処行動 | 改善 |
兄弟姉妹の生活の質 | 同程度 |
研究からの離脱 | 同程度 |
当事者の精神症状 | 同程度 |
当事者の再入院 | 同程度 |
当事者の平均入院日数 | 同程度 |
当事者の社会的機能 | 同程度 |
兄弟姉妹のウェルビーイング | 不明 |
兄弟姉妹の苦痛 | 不明 |
有害事象 | 不明 |
この表は、通常の支援に加えて兄弟姉妹に対する心理教育を行った場合と、通常の支援のみを比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
兄弟姉妹に対する心理教育では、兄弟姉妹が当事者との関係の中で感じる負担への対処行動が改善しました。しかし、兄弟姉妹の生活の質、研究からの離脱、当事者の精神症状、当事者の再入院や平均入院日数、当事者の社会的機能については、心理教育を受けた兄弟姉妹と受けなかった兄弟姉妹との間に違いはありませんでした。
兄弟姉妹のウェルビーイング、苦痛、有害事象についての報告はありませんでした。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。
留意点
兄弟姉妹のアウトカムは、他の続柄(親など)とは独立して報告されておらず、レビューに利用できたのは他の続柄を含めて収集されたデータの一部でした。兄弟姉妹に対する心理教育が効果的であるかどうかを判断するためには、より多くの研究が必要です。
- [引用]
- Sin J, Jordan CD, Barley EA, Henderson C, Norman I. Psychoeducation for siblings of people with severe mental illness. Cochrane Database of Systematic Reviews 2015, Issue 5. Art. No.: CD010540. DOI: 10.1002/14651858.CD010540.pub2.
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 双極性障害の家族介入
基礎情報
対象者 | 双極性障害を持つ人々とその家族や介護者 |
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組み入れ研究数 | 7件 |
研究参加人数 | 合計393人 |
最終検索日 | 2007年8月1日 |
効果の調べ方 | 双極性障害に関する家族心理教育を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 |
双極性障害に関する家族心理教育は何に効果があるか
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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双極性障害に関する家族心理教育 VS. 通常の支援 | |
当事者のリカバリーの程度 | 同程度 |
臨床的改善 | 同程度 |
服薬コンプライアンス | 同程度 |
家族との関係性 | 同程度 |
研究からの離脱 | 同程度 |
再発 | 報告なし |
双極性障害をもつ人の不安感 | 増加 |
この表は、双極性障害に関する家族心理教育を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
通常の支援に双極性障害に関する家族心理教育を追加することの効果は、今回の検討では確かめられませんでした。
臨床的改善とは、病気の症状が減少することや、社会で生活していくための能力が回復することです。
服薬コンプライアンスとは、当事者が医師の処方通りに服薬しているかどうかの指標です。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。
留意点
上記の結果は個別の研究で得られた結果を羅列しているに過ぎないため、科学的根拠は弱く、不十分です。今後、適切な研究方法を用いて、家族心理教育やそれ以外の家族介入について評価することが求められています。
- [引用]
- Justo L, Soares BGDO, Calil H. Family interventions for bipolar disorder. Cochrane Database of Systematic Reviews 2007, Issue 4. Art.No.: CD005167.DOI: 10.1002/14651858.CD005167.pub2.
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