#再発・入院の予防 #症状の軽減 #治療の継続
精神科事前指示
Psychiatric Advance Directive: PAD
精神科事前指示とは?
精神科事前指示とは、当事者が自分の治療について意思決定できなくなった時のために、治療に関する希望をあらかじめ文書に記しておくことです。受けたい治療、受けたくない治療や、薬に対する希望、治療について一緒に考え代わりに決めてもらう人、入院している間に頼れる人などを書き記しておきます。記入は精神保健福祉士等のスタッフと共に行われることもあります。事前指示はこれまで終末期医療でよく用いられてきましたが、重度精神疾患を持つ人は意思決定能力が一時的に低下することがあるため、精神医療においても事前指示が役に立つと考えられています。
世界の研究について知る(コクランレビュー) 重度精神疾患を持つ人々のための事前治療指示
基礎情報
対象者 | 重度精神疾患を持つ成人 |
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組み入れ研究数 | 2件 |
研究参加人数 | 合計321人 |
最終検索日 | 2008年2月 |
効果の調べ方 | 精神科事前指示を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 |
精神科事前指示は何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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精神科事前指示 VS. 通常の支援 | |
非自発的入院 | 減少 |
義務付けられた診察 | 減少 |
暴力行為 | 減少 |
ソーシャルワーカーの利用時間 | 減少 |
全ての入院 | 同程度 |
自発的入院 | 同程度 |
外来受診 | 同程度 |
治療コンプライアンス | 同程度 |
自傷 | 同程度 |
逮捕 | 同程度 |
研究からの離脱 | 同程度 |
この表は、精神科事前指示を行った場合と行わなかった場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
精神科事前指示を行ったグループでは、非自発的入院、義務付けられた診察、当事者の暴力行為が少なく、当事者のためにソーシャルワーカー(精神保健福祉士など)が働いた時間も少ない結果になりました。ソーシャルワーカーの利用時間が減少したことについては、望ましい変化かどうかが判断できないためになっています。
全ての入院や自発的入院、外来受診については効果の違いが見られませんでした。
治療コンプライアンス、自傷、逮捕、研究からの離脱についても、同様に効果の違いはありませんでした。
治療コンプライアンスとは、当事者が予定に従って治療を受けているかどうかの指標です。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。
留意点
組み入れられた研究が2件のみで、非常にデータが少ないため、現段階ではっきりとした推奨はできません。今後、より多くの研究が求められています。
- [引用]
- Campbell LA, Kisely SR. Advance treatment directives for people with severe mental illness. Cochrane Database of Systematic Reviews 2009, Issue 1. Art. No.: CD005963. DOI: 10.1002/14651858.CD005963.pub2.
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