#症状の軽減 #身体の健康
運動療法
運動療法とは?
精神疾患を持つ人にとって運動を行うことは、からだの健康とこころ(精神)の健康の両方によい影響があるといわれています。気分の落ち込みや自尊心の低下などの改善にも効果を発揮する可能性があります。運動療法とは、身体を動かすことによって、症状を軽くしたり、身体や脳の働きを良くしたりして、疾患や障害の回復を目指す支援のことを指します。統合失調症などの精神疾患の治療や支援にも、運動療法が取り入れられることがあります。この場合、運動前後のウォーミングアップとクールダウンとともに、ストレッチや筋力トレーニング、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動を行います。運動を行う頻度や時間、運動強度(運動による負荷)は、あらかじめ運動療法プログラムで決められていたり、運動する本人の感じ方や身体の状態に合わせて個別に調整されたりします。このような運動療法を行うことによって、精神疾患による症状を軽減する効果が期待されています。
世界の研究について知る(コクランレビュー) 統合失調症に対する運動療法
基礎情報
対象者 | 統合失調症または統合失調症様障害を持つ人 |
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組み入れ研究数 | 3件 |
研究参加人数 | 合計86人 |
最終検索日 | 2008年12月 |
効果の調べ方 | 1.運動療法を行った場合と行わなかった場合(通常の支援)を比較 2.運動療法を行った場合とヨガを行った場合を比較 |
運動療法は何に効果があるか?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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運動療法 VS. 通常の支援 | |
陰性症状 | 改善 |
6分間の歩行距離 | 延長 |
最大運動強度 | 向上 |
体重 | 同程度 |
BMI | 同程度 |
研究からの離脱 | 同程度 |
陽性症状 | 不明 |
運動療法 VS. ヨガ | |
精神症状 | 改善度小 |
生活の質 | 改善度小 |
有害事象 | 同程度 |
この表は、1. 運動療法を行った場合と、行わなかった場合を比べたとき、および2. 運動療法を行った場合と、ヨガを行った場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
1.運動療法では、統合失調症の陰性症状の改善に効果がありました。また、身体的健康として、6分間の歩行距離、最大運動強度の改善に効果がありました。体重やBMI、研究から離脱した人の割合は、運動療法と通常の支援の間に違いはありませんでした。また、統合失調症の陽性症状では、組み入れられた研究によって異なる結果が得られたため、結論が出ませんでした。
2.運動療法よりもヨガの方が、精神症状と生活の質に効果がありました。運動療法またはヨガを行うことによる有害事象については、違いがありませんでした。
運動療法では、ウォーミングアップ、ストレッチやリラクゼーション、ウォーキングや軽いジョギングなどによる有酸素運動、筋力トレーニング、クールダウンなどが行われました。
ヨガでは、呼吸法の練習とリラクゼーションを用いたプログラムが実施されました。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。
留意点
組み入れられた研究が3件のみで、いずれも研究の規模が小さく、効果の測定に用いられた尺度が異なっていました。運動療法の実施による効果について結論を出すためにはより大規模な研究が必要です。
- [引用]
- Gorczynski P, Faulkner G. Exercise therapy for schizophrenia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2010, Issue 5. Art. No.: CD004412. DOI: 10.1002/14651858.CD004412.pub2.
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