#症状の軽減 #生活の向上 #治療の継続

認知行動療法(第3世代)

Cognitive behavioral therapy(Third wave)

認知行動療法(第3世代)とは

従来の認知行動療法は、不適応な行動や自分を苦しくするような考え方のくせを楽に過ごせるように変容することを目指した心理療法です。それに対し、第3世代の認知行動療法では、行動や考え方のくせや、あるがままの自分や状況に気づき、受け入れたり、距離をとったりすることを目的とし、気づきや受容によって日常での行動を活性化することを目指します。従来の認知行動療法に置き換わるものではなく、それぞれに良い点があり、目的が異なったり、補い合ったりする場合があることに注意が必要です。
▶「認知行動療法」はこちら

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 鬱病に対する「第3世代(Third wave)」認知行動療法と通常治療法

基礎情報

対象者 急性期の単極性うつ病を持つ人
組み入れ研究数 4件
研究参加人数 合計224人
最終検索日 2013年3月
効果の調べ方 認知行動療法(第3世代)による支援と通常の支援を比較

うつ病に対する認知行動療法(第3世代)は通常の支援と比べて何に効果があるか?

表の見方はこちら

アウトカム/関心ごと 効果
認知行動療法(第3世代) VS. 通常の支援
うつ症状 改善
治療からの離脱 減少
寛解 良好
不安 改善
日常生活の困難さ 改善

この表は、うつ病を持つ人を対象として、認知行動療法(第3世代)による支援を行った場合と通常の支援を行った場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

うつ病に対する認知行動療法(第3世代)は、うつ症状や不安、日常生活の困難さの改善だけでなく、寛解や治療からの離脱の減少に効果がありました。

うつ症状については、臨床的に意味のある最低限の変化があるかどうかを判断するための指標でも良好な効果がみられました。
治療からの離脱とは、予定された治療期間が終わる前に、参加者がその治療への参加を取りやめることです。
組み入れられた4つの研究で行われた認知行動療法(第3世代)は、拡張行動活性化、アクセプタンス・コミットメント・セラピー、競争的記憶訓練でした。
拡張行動活性化とは、機能分析と呼ばれる行動とその前後のアセスメントに基づき、リラクゼーションスキルの習得、日常の中で楽しく前向きに感じられる出来事を増やすこと、社会的および問題解決スキルのトレーニングなどを実施する支援法です。従来の行動活性化療法は主に行動に焦点を当てることが特徴でしたが、拡張行動活性化療法では苦手な場面を回避することが抑うつ感を増加させるという前提に立ち、回避せず否定的思考から「今、ここ」で起こる体験へと注意を移すように促します。
アクセプタンス・コミットメント・セラピーとは、独自の6つの原則に従って心理的柔軟性(「今、ここ」に気づき、心を閉じずオープンに保ち、自分にとって大事だと思うことを実行する心の力)の獲得を目指す心理療法です。面接の過程では自分の内部の身体感覚に気づくトレーニングなど特徴的なワークが用いられます。思考内容そのものの変容ではなく、思考との向き合い方、距離の取り方に焦点を当てている点が従来の認知療法と異なります。
競争的記憶訓練とは、うつ病で見られる否定的な思考の反すう(繰り返し考えること)に関する心理教育、反すうを受け入れること、自分にとって価値の無いものであることを知ること、うまく反すうを手放すことができた場面の姿勢・表情を再現し「こうであったら良いな」と自分が考える肯定的なセリフを発声すること、などで構成される支援法です。

留意点

うつ病に対する第3世代の認知行動療法は、通常の支援よりも効果的である可能性があります。しかし、科学的根拠の質が低く、有効であるかについて結論を出すことは困難です。組み入れられた研究の実施期間は2週間〜3ヶ月間であり、比較的短期間のものであったことから、より長期に渡る効果を調べることが重要です。

[引用]
Churchill R, Moore THM, Furukawa TA, Caldwell DM, Davies P, Jones H, Shinohara K, Imai H, Lewis G, Hunot V. ‘Third wave’ cognitive and behavioural therapies versus treatment as usual for depression. Cochrane Database of Systematic Reviews 2013, Issue 10. Art. No.: CD008705. DOI: 10.1002/14651858.CD008705.pub2.
詳しくはこちら

世界の研究について知る(コクランレビュー) うつ病に対する「第3世代(Third wave)」認知行動療法と他の心理療法

基礎情報

対象者 急性期の単極性うつ病を持つ人
組み入れ研究数 3件
研究参加人数 合計144人
最終検索日 2013年3月
効果の調べ方 第3世代の認知行動療法と従来の認知行動療法を比較

うつ病に対する第3世代の認知行動療法は従来の認知行動療法と比べて何に効果があるか?

表の見方はこちら

アウトカム/関心ごと 効果
第3世代の認知行動療法VS. 従来の認知行動療法
うつ症状の程度(2ヶ月後) 改善
うつ症状の程度(終了時) 同程度
うつ症状が一定以上改善した人の割合 同程度
治療からの離脱 同程度
寛解 同程度

この表は、うつ病を持つ人を対象として、第3世代の認知行動療法による支援を行った場合と従来の認知行動療法を行った場合を比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

うつ病に対する第3世代の認知行動療法は、支援終了してから2ヶ月後におけるうつ症状の改善に効果がありました。支援終了時のうつ症状やうつ症状が一定以上改善した人の割合、治療からの離脱、寛解には効果は見られませんでした。

治療からの離脱とは、予定された治療期間が終わる前に、参加者がその治療への参加を取りやめることです。
組み入れられた3つの研究で行われた第3世代の認知行動療法は、拡張行動活性化またはアクセプタンス・コミットメント・セラピーでした。プログラムは、1回あたり50〜90分のセッションを週1〜2回、12〜16週に渡って実施されました。
拡張行動活性化とは、機能分析と呼ばれる行動とその前後のアセスメントに基づき、リラクゼーションスキルの習得、日常の中で楽しく前向きに感じられる出来事を増やすこと、社会的および問題解決スキルのトレーニングなどを実施する支援法です。従来の行動活性化療法は主に行動に焦点を当てることが特徴でしたが、拡張行動活性化療法では苦手な場面を回避することが抑うつ感を増加させるという前提に立ち、回避せず否定的思考から「今、ここ」で起こる体験へと注意を移すように促します。
アクセプタンス・コミットメント・セラピーとは、独自の6つの原則に従って心理的柔軟性(「今、ここ」に気づき、心を閉じずオープンに保ち、自分にとって大事だと思うことを実行する心の力)の獲得を目指す心理療法です。面接の過程では自分の内部の身体感覚に気づくトレーニングなど特徴的なワークが用いられます。思考内容そのものの変容ではなく、思考との向き合い方、距離の取り方に焦点を当てている点が従来の認知療法と異なります。

留意点

うつ病に対する第3世代の認知行動療法は、従来の認知行動療法に比べて有効であるかについて結論を出すことは困難です。組み入れられた研究の数が少なく、実施期間が比較的短期間であったことから、長期的な効果を調べるより多くの研究の実施が望まれます。

[引用]
Hunot V, Moore THM, Caldwell DM, Furukawa TA, Davies P, Jones H, Honyashiki M, Chen P, Lewis G, Churchill R. ‘Third wave’ cognitive and behavioural therapies versus other psychological therapies for depression. Cochrane Database of Systematic Reviews 2013, Issue 10. Art. No.: CD008704. DOI: 10.1002/14651858.CD008704.pub2.
詳しくはこちら