うつ病の人が仕事に復帰するためには、どんな方法がある?
職場復帰を促す支援とは
うつ病の人は、1日の大半を、涙が出たり、イライラしたり、疲れがたまった状態で過ごすことが多く、睡眠や集中力、記憶力に問題が生じることがあります。うつ病は仕事に影響を与えることがあり、仕事を休んだり、仕事に対処できていないと感じたりしている可能性があります。仕事に戻るためには、薬物療法や心理療法などの臨床プログラムによりうつ症状を軽減することや職場復帰支援を受けること、勤務時間の変更などによる職場の環境調整が助けとなるかもしれません。
世界の研究について知る(コクランレビュー) うつ病患者の復職を改善するための介入
基礎情報
対象者 | うつ病を持つ人 |
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組み入れ研究数 | 45件 |
研究参加人数 | 合計12,109人 |
最終検索日 | 2020年4月 |
効果の調べ方 | 1. 臨床プログラムと組み合わせた職場の変化を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 2. 職場の環境調整を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 3. 心理療法を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 4. 抗うつ薬と組み合わせた心理療法を行った場合と、抗うつ薬のみを行った場合(通常の支援)を比較 5. 抗うつ薬のみを行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 6. 健康管理の改善を行った場合と、行わなかった場合(通常の支援)を比較 7. 指導付き筋力トレーニングを行った場合と、リラクゼーションを行った場合を比較 8. 有酸素運動を行った場合を行った場合と、リラクゼーションまたはストレッチを行った場合を比較 |
うつ病の人が仕事に復帰するためには、どんな方法がある?
アウトカム/関心ごと | 効果 |
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1. 臨床プログラムと組み合わせた職場の変化 VS. 通常の支援 | |
病気欠勤の日数 | 少ない |
うつ症状 | 改善 |
仕事に対処する能力 | 向上 |
欠勤人数 | 同程度 |
2. 職場の環境調整VS. 通常の支援 | |
欠勤人数 | 同程度 |
うつ症状 | 同程度 |
仕事に対処する能力 | 同程度 |
病気欠勤の日数 | 多い |
3. 心理療法 VS. 通常の支援 | |
病気欠勤の日数 | 少ない |
うつ症状 | 改善 |
仕事に対処する能力 | 同程度 |
4. 抗うつ薬と組み合わせた心理療法 VS. 抗うつ薬のみ | |
病気欠勤の日数 | 同程度 |
うつ症状 | 同程度 |
5. 抗うつ薬のみ VS. 通常の支援 | |
病気欠勤の日数 | 不明 |
6. 健康管理の改善 VS. 通常の支援 | |
病気欠勤の日数 | 少ない |
うつ症状 | 改善 |
仕事に対処する能力 | 低下 |
7. 指導付き筋力トレーニング VS. リラクゼーション | |
病気欠勤の日数 | 少ない |
8. 有酸素運動VS. リラクゼーションまたはストレッチ | |
病気欠勤の日数 | 同程度 |
この表は、さまざまな職場復帰を促す支援を行った場合と、通常支援や他の支援を比較した時、どの程度効果に違いがあるかを示しています。
臨床プログラムと組み合わせた職場の環境調整、心理療法、健康管理の改善は、通常の支援と比較して、病気欠勤の日数を減らし、うつ症状を改善する効果が大きい可能性が示されました。
指導付き筋力トレーニングはリラクゼーションと比較して、病気欠勤の日数を減らす効果が大きい可能性が示されました。
そのほかの職場復帰を促す支援では、明確な効果は示されませんでした。
臨床プログラムとは、通常治療と同じくうつ症状を改善するために行われているもののことで、抗うつ薬の服薬や心理療法などが含まれます。
職場の環境調整とは、労働時間の短縮や仕事の作業の変更などを行い、働きやすいように仕事に関する条件を改善することです。
心理療法とは、認知行動療法や対人関係療法などのことです。認知行動療法のページはこちら。
健康管理の改善とは、ケースマネージャーなどが個別のケアプランを作成するなどして患者自身の健康をサポートすることを指します。
筋力トレーニングや有酸素運動などの運動療法のページはこちら。
留意点
組み入れられた研究の多くは、信頼性が中程度から低いものであり、いくつかの結果は少ない研究から得られたものです。職場復帰のために、職場の変化と臨床プログラムのどのような組み合わせが最良であるかを評価するためには、より多くのエビデンスが必要です。
- [引用]
- Nieuwenhuijsen K, Verbeek JH, Neumeyer-Gromen A, Verhoeven AC, Bültmann U, Faber B. Interventions to improve return to work in depressed people. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 10. Art. No.: CD006237. DOI: 10.1002/14651858.CD006237.pub4.
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