本当に入院は短いほうがいいの?

欧米諸国では1960年代以降、大規模な精神病院が次々に閉鎖され、入院期間は大幅に減少しました。新しい薬の開発も後押しとなり、重度精神疾患を持つ人は、病院ではなく地域でケアを受けながら暮らすようになりました。このような入院の短期化については賛否両論があります。入院コストが削減され、当事者の「施設化」現象(入院している状態に慣れてしまうこと)を防げるために良いとする見方がある一方、治療が不十分なまま退院してしまい、すぐに再入院することを繰り返す(「回転ドア」現象)恐れがあるため良くないとする見方もあります。短期入院が長期入院に比べて優れているかを科学的に検証することが大切です。

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 重度精神疾患を持つ人々に対する入院期間の影響

基礎情報

対象者 重度精神疾患を持つ人
組み入れ研究数 6件
研究参加人数 合計2030人
最終検索日 2012年5月
効果の調べ方 計画的な短期入院と、標準的な長期入院を比較

短期入院は長期入院より優れているか?

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アウトカム/関心ごと 効果
短期入院 VS. 長期入院
社会的機能 高い
退院が予定より遅れる割合 低い
再入院 同程度
準備の整わない退院が起きる割合 同程度
精神状態 同程度
研究からの離脱 同程度
死亡率 同程度

この表は、短期入院を長期入院と比べたとき、どのような違いがあるかを示しています。

短期入院だった人のほうが、社会的機能(就業状態や家事能力など)が高く、退院が予定より遅れる割合が低いことが示されました。
再入院率、準備の整わない退院、精神状態、研究からの離脱、死亡率については、短期入院と長期入院ではっきりと差はありませんでした。つまり、短期入院は「回転ドア」現象や、不十分な治療を助長するわけではないことが示されました。

準備の整わない退院とは、医療的判断に従わず退院してしまうことを指します。
研究からの離脱とは、予定された研究期間が終わる前に、参加者がその研究への参加を取りやめることです。

留意点

データは全て30年以上前のもので、質や量は十分ではありませんでした。より大規模でよく設計された試験が行われ、きちんと報告されることが求められています。

[引用]
Babalola O, Gormez V, Alwan NA, Johnstone P, Sampson S. Length of hospitalisation for people with severe mental illness. Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 1. Art. No.: CD000384. DOI: 10.1002/14651858.CD000384.pub3.
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