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デイホスピタル

デイホスピタルとは?

デイホスピタルとは、デイ(=日帰り)+ホスピタル(=入院)の名称から連想する通り、入院による治療に比べて制約が少なく、外来診療よりも手厚い治療を受けることができる通院による医療サービスです。主に、入院医療でなければ治療が難しいとされていた、急性期または重度の精神疾患を持つ人のための診断と治療を行う施設と定義されています。入院期間が短い海外では、退院後の不安定な期間をサポートするために、デイホスピタルが活用される場合があります。

日本には、このようなデイホスピタルはほとんどありません。「デイケア」がこれに近い機能をもっており、重なる点が多いですが、海外ではデイホスピタルとデイケアを区別しています。

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 統合失調症を持つ人々に対するデイホスピタル 対 外来治療

基礎情報

対象者 統合失調症と、統合失調症に類似する重度精神疾患を持つ人
組み入れ研究数 4件
研究参加人数 合計309人
最終検索日 2009年5月
効果の調べ方 デイホスピタルによるケアを行った場合と、通常の外来診療を行った場合を比較

デイホスピタルは何に効果があるか?

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アウトカム/関心ごと 効果
デイホスピタル VS. 外来診療
未就労(失業状態) 低下
精神状態 同程度
社会的機能 同程度
治療からの離脱 同程度
入院率 不明
平均入院日数 不明
設立・運営の費用 不明

この表は、デイホスピタルを外来診療と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

デイホスピタルを行った場合、未就労(失業状態)を低下させることに効果が示されました。
精神状態や社会的機能、治療からの離脱では、デイホスピタルと外来診療の間に違いはありませんでした。
入院率については、データの質が研究ごとに異なっており、平均入院日数については、報告が不十分である点がありました。また、外来診療と比べデイホスピタルは設立や運営の費用が多くかかることが示される結果がありました。しかし、デイホスピタルおよび外来診療以外にかかった他の費用の情報が不十分であったため、結論は出せませんでした。

治療からの離脱とは、予定された治療期間が終わる前に、参加者がその治療への参加を取りやめることです。 

留意点

組み入れられた研究は1986年以前に行われたものであり、いずれも古いデータによってデイホスピタルの効果が調べられています。現在、重要と考えられている生活の質や健康的に過ごした日数、費用などの多くの情報が無いため、デイホスピタルの効果を判断するためのデータが不足しています。

[引用]
Shek E, Stein AT, Shansis FM, Marshall M, Crowther R, Tyrer P. Day hospital versus outpatient care for people with schizophrenia. Cochrane Database of Systematic Reviews 2009, Issue 4. Art. No.: CD003240. DOI: 10.1002/14651858.CD003240.pub2
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 急性精神障害に対するデイホスピタル 対 入院

基礎情報

対象者 急性精神障害を持つ人
組み入れ研究数 10件
研究参加人数 合計2685人
最終検索日 2010年6月
効果の調べ方 デイホスピタルによるケアを行った場合と、入院治療を行った場合を比較

デイホスピタルは何に効果があるか?

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アウトカム/関心ごと 効果
デイホスピタル VS. 入院治療
(入院日数と比べたときの)デイホスピタルの利用日数 長い
(初回入院期間と比べたときの)デイホスピタルの初回の利用期間 長い
治療からの離脱 同程度
デイホスピタルの再利用または再入院の割合 同程度
未就労(失業状態) 同程度
生活の質 同程度
治療満足度 同程度

この表は、デイホスピタルを入院治療と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

デイホスピタルでは、入院治療と比べて利用日数および初回の利用期間がより長いという結果が示されました。米国では、より迅速に治療を終了することを目指すのに対し、ヨーロッパ諸国では適切な治療を実施し、より緩やかに終了することを目指す傾向にあり、国によって文化や制度に違いがあります。そのため、日数や期間の延長を効果と捉えるか、悪化と捉えるかについて結論を出すのは困難です。
その他、治療からの離脱や、デイホスピタルの再利用または再入院の割合、未就労(失業状態)、生活の質、治療満足度については違いがありませんでした。これらの結果は、デイホスピタルが入院治療と同程度の効果があることを示しています。

治療からの離脱とは、予定された治療期間が終わる前に、参加者がその治療への参加を取りやめることです。 

留意点

デイホスピタルの費用と効果の関係を調べた研究がなく、費用対効果を調べる研究が必要です。

[引用]
Marshall M, Crowther R, Sledge WH, Rathbone J, Soares‐Weiser K. Day hospital versus admission for acute psychiatric disorders. Cochrane Database of Systematic Reviews 2011, Issue 12. Art. No.: CD004026. DOI: 10.1002/14651858.CD004026.pub2.
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