#就労

援助付き雇用/個別就労支援プログラム

Individual Placement and Support: IPS

援助付き雇用/個別就労支援プログラム(IPS)とは?

援助付き雇用とは、精神疾患を抱える人が仕事に就けるよう支援する方法の一つです。援助付き雇用では、利用者がまず就職してから、仕事をする上での支援やトレーニングを提供するという理念があります。具体的には、職業準備性の向上を図る訓練や準備の期間を設けずに、現場に出てから訓練を行うことが特徴です。また、一般企業への就職を目指すことも大きな特徴の一つです。

個別就労支援プログラム(IPS)とは、援助付き雇用の一種で、何をどのように行うかをより詳しく定めたプログラムです。就労支援専門スタッフが利用者の希望、スキル、困難さ等を聴き取ります。そのうえで、利用者が自分に合った仕事や働き方を見つけ、就職した後に、就労支援専門スタッフは利用者が仕事を継続できるようにサポートします。また、就労支援専門スタッフは臨床・生活支援スタッフと積極的に連携を取り支援を進めます。

コクランレビューについて

世界の研究について知る(コクランレビュー) 重度精神疾患を持つ成人に対する援助付き雇用

基礎情報

対象者 重度精神疾患をもつ生産年齢(通常16~70歳)の人々
組み入れ研究数 14件
研究参加人数 合計2265人
最終検索日 2010年2月
効果の調べ方 援助付き雇用/個別就労支援プログラム(IPS)と、その他の就労支援を比較

援助付き雇用は何に効果があるか?

表の見方はこちら

アウトカム/関心ごと 効果
援助付き雇用 VS. その他の就労支援
就職率(すべての職) 増加
競争的雇用で働いた日数 増加
有給雇用(すべての形態)で働いた日数 増加
競争的雇用の在職期間(週数) 増加
有給雇用(すべての形態)の在職期間(週数) 増加
競争的雇用に就職するまでに要した時間 減少

この表は、援助付き雇用をその他の就労支援と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

このレビューの結果では、当事者が援助付き雇用を利用すると就職の可能性が高まること、仕事をする日数や期間が増えること、より素早く仕事を見つけられることが示されました。

競争的雇用とは一般企業での就労のことで、障害を持つ人・持たない人が分け隔てのない環境で働き、最低賃金以上が支払われます。一方、有給雇用(全ての形態)は、賃金が支払われる全ての仕事を指します。したがって、例えば日本における就労継続支援事業所(A型・B型)のような障害福祉サービス事業所での雇用は、競争的雇用には含まれず、有給雇用(すべての形態)には含まれると考えられます。

留意点

生活の質、精神疾患の症状、入院日数、費用といった就職以外の項目については、十分な情報が得られませんでした。また、組み入れられた研究は主に北アメリカとヨーロッパで行われていました。
今後の研究では、就職とそれ以外の項目の両方を調べること、効果がどれくらい持続するかを調べることが求められています。

[引用]
Kinoshita Y, Furukawa TA, Kinoshita K, Honyashiki M, Omori IM, Marshall M, Bond GR, Huxley P, Amano N, Kingdon D. Supported employment for adults with severe mental illness. Cochrane Database of Systematic Reviews 2013, Issue 9. Art. No.: CD008297. DOI: 10.1002/14651858.CD008297.pub2.
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世界の研究について知る(コクランレビュー) 重度精神疾患を持つ成人に対する就職および就業継続のための介入:ネットワークメタアナリシス

基礎情報

対象者 重度精神疾患をもつ生産年齢(通常18~70歳)の人々
組み入れ研究数 48件
研究参加人数 合計8743人
最終検索日 2016年11月11日
効果の調べ方 援助付き雇用または他の特定の支援と組み合わせた援助付き雇用(補強された援助付き雇用)と、以下の支援を比較
  • 職業準備訓練
  • 過渡的雇用(保護的雇用 )
組み入れ研究のうち、1年以上の長期的に観察された研究(22件5233人)での効果を調べた

援助付き雇用または補強された援助付き雇用は何に効果があるか?

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アウトカム/関心ごと 効果
援助付き雇用 VS. 職業準備訓練
競争的雇用の就職率 増加
競争的雇用への定着(週数) 増加
援助付き雇用 VS. 過渡的雇用(保護的雇用)
競争的雇用の就職率 増加
競争的雇用への定着(週数) 増加
補強された援助付き雇用 VS. 職業準備訓練
競争的雇用の就職率 増加
競争的雇用への定着(週数) 増加
補強された援助付き雇用 VS. 過渡的雇用(保護的雇用)
競争的雇用の就職率 増加
競争的雇用への定着(週数) 増加

この表は、「援助付き雇用」と他の特定の支援と合わせた「補強された援助付き雇用」を、職業準備訓練および過渡的雇用(保護的雇用)と比べたとき、どの程度効果に違いがあるかを示しています。

このレビューの結果では、援助付き雇用と補強された援助付き雇用は、職業準備訓練や過渡的雇用(保護的雇用)よりも、競争的雇用を獲得した人の割合と競争的雇用の就業継続の期間(週数)が多く、効果的であることが示されました。

補強された援助付き雇用とは、他の特定の支援(ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)、認知行動療法、コンピューターソフトを用いた認知トレーニング、ACTなど)と援助付き雇用を組み合わせた支援を指します。
競争的雇用とは一般企業での就労のことで、障害を持つ人・持たない人が分け隔てのない環境で働き、最低賃金以上が支払われます。
職業準備訓練とは、一部の就労移行支援事業所で実施されている就労前の準備性を高めることを重視した支援のことを指します。
過渡的雇用(保護的雇用)とは、日本における就労継続支援事業所(A型・B型)のような障害福祉サービス事業所での雇用を指します。
したがって、援助付き雇用および補強された援助付き雇用は、重度精神疾患を持つ人々にとって、就職し仕事を継続するという点で効果的である支援であると考えられます。

なお、1年未満の短期的に観察された研究(18件2291人)の結果は除き、1年以上の長期的な研究のみを抜粋しました。また、このレビューでは、職業準備訓練と過渡的雇用(保護的雇用)の他に、精神科治療のみを行った対象者との比較についても調べています。
より詳しく知りたい方は、こちら(コクランへ)をご覧ください。

留意点

組み入れられた研究の結果の質は、中程度から低度であったため、今後の研究によって結果が変わる可能性があります。また、競争的雇用への就業継続に関して、そのためにかかる費用と労力が個人および社会にとって効果があるかどうかを調べるためには、さらに多くの研究が必要です。

[引用]
Suijkerbuijk YB, Schaafsma FG, van Mechelen JC, Ojajärvi A, Corbière M, Anema JR. Interventions for obtaining and maintaining employment in adults with severe mental illness, a network meta‐analysis. Cochrane Database of Systematic Reviews 2017, Issue 9. Art. No.: CD011867. DOI: 10.1002/14651858.CD011867.pub2.
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